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問題視されない政教関係事象の数々
(神政連レポート『意』156号掲載記事)
大原康男・國學院大學教授

 平成13年8月13日になされた小泉純一郎首相の國神社参拝に反発した人々によって、大阪・愛媛・福岡・東京・千葉・沖縄の6都府県で違憲訴訟が提起され、そのうち大阪・愛媛・福岡・千葉の4府県で5件の地裁判決が出されたことは記憶に新しい。

 しかし、このうち沖縄を除く5都府県の原告団の代表が真宗の僧侶かキリスト教徒であるという事実は存外に知られていない(もっとも、沖縄でも事務局や連絡先はキリスト教会と真宗僧侶である)。まさに真宗・キリスト教連合軍による反國宗教戦争≠フような印象をいだいてしまうが、それでは以下紹介するような政教関係事象について彼らはどう考えるのであろうか。

 東京都墨田区には高さ41メートルにも及ぶ三重の供養塔を背後にかかえた壮大な寺院様の建物――東京都慰霊堂が聳え立っている。関東大震災と戦災で亡くなった人々の遺骨のうち、引き取り手のない16万2800体を収納し供養する都有の施設である。その管理は昭和20年9月に設立された(財)東京都慰霊協会に委ねられ、同協会は毎年3月10日と9月1日に「都内戦災殉遭難者・大正震災遭難者慰霊大法要」を営んでいる。

 法要は東京五山と呼ばれる著名な寺院(護国寺・増上寺・浅草寺・本門寺・寛永寺)の住職が輪番で大導師を務め、東京都仏教連合会が協力して行うことが慣例となっている。式次第も僧侶の読経、都知事・都議会議長・墨田区長・墨田区議会議長(代理を含む)の追悼の辞、参列者の焼香と続き、最後に大導師の法話によって結ばれる厳粛な仏教儀式。

 都有地に都有財産である仏教的慰霊施設が存在し、民間団体の主催とは言いながら、慰霊法要には都と墨田区のトップが公式参列し、その準備や執行には都や区の職員が協力しているという事実は、東京都と墨田区が震災・戦災犠牲者の慰霊という営みを通して仏教と深く関わっていることを示している。

 同様なケースはほかにもある。昭和9年の函館大火で犠牲となった遺骨のうち、引き取り手のない662体を収納し、毎年3月21日の命日に「函館大火慰霊法要」を行っている函館大火慰霊堂である(慰霊堂は市有財産で市が維持・管理)。法要は函館市仏教会の主催、函館市福祉部の後援で執行、僧侶の読経する中を福祉部長・消防署長らが参列する。規模は小さいものの、東京都慰霊堂といかに似ていることか。

 一方、兵庫県姫路市の名古山霊苑(姫路市が管理する墓地公園)の中央にはドーム型の巨大な仏舎利塔が建っている。この仏舎利塔の中には、昭和29年4月、人類永遠の平和と幸福の祈願を込めてインドの故ネール首相から贈られた仏舎利を納める厨子の仏舎利殿があり、その周囲は釈迦三尊と十大弟子の立像や、聖徳太子と最澄・空海から日蓮・道元に至るわが国仏教各宗派開祖の座像などで装飾され、荘厳な雰囲気に満ちている。

 その仏舎利塔を市の委託によって管理する「名古山霊苑協会」は、市の連合仏教会の協賛による涅槃会・仏生会をはじめ月例法要や宗教講話など、種々の行事・勤行を行っている。仏舎利塔そのものは民間の奉賛会が建設し、市に寄贈する形で実現したらしいが、とにかく市有地に純然たる仏教施設が存在し、民間団体によってとはいえ、様々な仏教行事や勤行が営まれている限り、霊苑の管理を通して姫路市が仏教と深い関係を持っていると評されてもやむを得まい。

 また、国公立大学医学部が行っている献体慰霊祭にも注目したい。献体とは、故人の生前の意思に基づいて、死後、その遺体を医学・歯学教育のための解剖用教材として、当該研究・教育を行う大学に寄贈することを言うが、この献体者に対する感謝と慰霊の気持ちを込めて、遺体を提供された大学の医学部などが主催し、遺族ら関係者を招いて営むのがこの慰霊祭である。

 概ね仏式で行われることが多い。例えば、京都大学医学部はこれまで京都市内にある浄土宗の光明寺において「解剖体祭」を執り行ってきたし、滋賀医科大でも比叡山延暦寺で慰霊法要と納骨・返骨式を併せて挙行している。東京大学医学部の「解剖体慰霊祭」は都内谷中墓地に隣接した天台宗天王寺で催されているが、こうした事例はほかにも少なくない。

 似たようなことと言えば、マウスやモルモットなどの実験動物の慰霊法要を行っている大学医学部も少なからずある。国公立の衛生研究所や公設屠畜場でもこうした獣魂慰霊祭は頻繁に行われており、ほとんどが仏式である。こうした営みは魚介類にも及び、漁協や魚市場などが主催して営む「魚介供養」に自治体の首長や職員が参列するというケースもあちことで見られる。

 ここでキリスト教の方に目を向けてみると、まず、頭に浮かぶのは長崎市西坂公園に建てられている「二十六聖人記念レリーフ像」である。このレリーフ像は、慶長2年(1597)にキリシタン禁教令によってこの地で殉教し、後に聖人に列せられた26人のキリスト教徒と宣教師を記念するために昭和37年に建立されたもの。

 3年後の昭和40年にレリーフ像は保存会から、台座はカトリック修道会のイエズス会からそれぞれ寄贈されて長崎市の所有となり、以後は市が管理にあたっている。レリーフ像の背後にあるイエズス会所有の「二十六聖人資料館」には殉教信徒の遺骨の一部が安置されており、レリーフ像と資料館の敷地は市有地であるが、その敷地貸与は無償である。また、レリーフ像の前の広場では毎年2月5日に殉教記念ミサが営まれている。

 見れば分かるように、市有地にレリーフ像や資料館のような宗教施設に類似する建造物があり、宗教行事が行われ、宗教団体に無償で土地が貸与されているのである。長崎市が日本のキリスト教にとって深い由緒のある土地であるとはいえ、このキリスト教に対する手厚い扱いには目を見張るものがあるだろう。

 長崎市と並んでキリスト教伝来の歴史の一節を刻んでいるのが天草である。熊本県本渡市では、毎年10月の第4日曜日に市の全面的支援の下で天草・島原の乱の殉教者を慰霊する「天草殉教祭」が営まれている。祭典は神道・仏教・キリスト教の三教による合同祭典の形式をとっているが、それぞれの所要時間・規模、従ってそれに充てられる予算額からすれば、カトリック・ミサとそれに続くキャンドル行進の比重は他を圧倒しており、神式祭典・仏式法要は添え物のような観さえする。

 そればかりではない。祭典が行われる殉教公園には数メートルもの高さのキリスト平和像や無名の信徒が眠るキリシタン墓地があり、近くにある市立「天草切支丹館」(天草キリシタンの歴史を伝へる約600点の資料を収蔵・展示)の正面玄関には十字架がデザインされているし、公衆電話ボックスにも十字架が描かれ、街灯のてっぺんにも十字架がつけられ、噴水には小さなマリア像までが据えられている――といった具合に、このあたり一帯はキリスト教一色の風景であると言っても過言ではない。

 本渡市としては観光政策の一つとして行っているのだろうが、地方公共団体が特定の宗教に格別に入れ込んでいるという印象は拭い難い。

 キリスト教に関わる政教関係事象は西日本ばかりではない。岩手県水沢市には伊達政宗の家臣であり、胆沢川の灌漑工事を行ってこの地一帯を豊かな穀倉地帯と化さしめたことで地元民から今も仰がれているキリシタン大名・後藤寿庵を祀る寿庵廟がある。毎年、5月下旬の日曜日にはこの寿庵廟でカトリック水沢教会が主催し、地元の胆沢平野土地改良区(特別地方公共団体)などが後援する「後藤寿庵大祈願祭」が営まれ、田畑の祝別と五穀豊穣が祈られるが、水沢市長や土地改良区理事長が参列して祝辞を述べるのが慣例となっている。

 市有地にキリスト教色濃厚な個人廟が建てられ、そこで毎年カトリック・ミサが行われ、それを土地改良区が後援し、公務員(市長・土地改良区理事長)が参列して祝辞を述べる、という実情を見れば、寿庵廟を介して地方公共団体がキリスト教と特別な関係を持っていると見られよう。

 そのほか、国や自治体が孔子を祀る施設を持ち、そこで「釈奠(せきてん)」(孔子およびその弟子を祀る祭儀)を行っているケースがいくつかあるが(東京都湯島聖堂・佐賀県多久市多久聖廟・栃木県足利市足利学校孔子廟)、紙数の関係で子細は省略する。

 もとより、それぞれの地域住民にこれまで問題にされなかった宗教的施設の存在やそれへの便宜供与、また同様に何の違和感もなく行われてきた宗教的儀式のありようを非難しようとしているのではない。しかし、神道やそれにつながる同種事象については極めて厳格な政教分離を要求しながら、ことが他の宗教、とりわけ仏教やキリスト教に及んでくるや見て見ないふりをする身勝手なダブル・スタンダードは厳しく批判されねばならない。 何度も言ってきたことなので気が引けるが、政教分離の問題は国家や公共団体という権力機構と宗教、その両者のタテの関係だけで見るのではなく、宗教学者の故佐伯真光氏が常々指摘していたように、法の下で各宗教が平穏裡に共存していくためには、それぞれの宗教が互いにどのように折り合っていけばよいのか、というヨコの関係にも目を向けるべきではあるまいか。そのような柔軟な配慮こそが他宗教にも寛容な日本人の精神的伝統に合致するものであり、さもなくば、政教関係の安定なぞ望むべくもあるまい。


国会議員80人が靖國神社に参拝(17.4.22)

 超党派の「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」(会長=瓦力・元防衛長官)のメンバーが22日午前、東京・九段北の靖国神社を参拝した。

 同神社の春季例大祭に合わせた恒例行事で、綿貫民輔・前衆院議長や平沼赳夫・前経済産業相ら自民、民主両党の国会議員80人が参加した。政府から西川公也内閣府副大臣、今津寛防衛副長官、政務官3人も参加した。閣僚はいなかった。

 同会副会長の藤井孝男・元運輸相は参拝後に記者会見し、小泉首相の靖国神社参拝が中国などの反日デモの原因となっているとの見方について、「先人の御霊(みたま)を参拝することは、自然な姿だ。靖国神社参拝を政治的に結びつけること自体が友好関係をわい曲化している」と述べた。

 細田官房長官は同日の記者会見で、副大臣、政務官も参拝したことについて「特に承知していない」と述べた。


謎の靖國神社へようこそ」



 

 

 

 靖國神社についてもっとよく知ってもらおうと、外国特派員を対象にした神社本庁主催の勉強会が昨年4月 22日、春季例大祭に合わせて靖國神社で開催され、世界各国の通信社など36社から50名が参加した。
 当日はまず祭典に参列。マスコミの報道からは窺い知ることの出来ない厳粛な雰囲気に、参加者はみな口々に「感動した」と語っていた。祭典終了後は元宮・鎮霊社を見学し、引き続き遊就館へ。さまざまな戦争の背景を解説した展示内容に「このような歴史は西洋ではほとんど知られていない。もっと多くの人に見てもらうべきだ」と声も聞かれた。

 

 

 

 

 午後からは山口建史靖國神社禰宜による靖國神社の概要についての講演と、さらに阪本是丸國學院大學教授を交えての質疑応答が行われた。
 終了後に参加者から寄せられたアンケートには、「今後もこのような勉強会をぜひ続けてほしい」との意見が多く見られた。